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国宝瑞龍寺、仏殿の屋根は鉛の瓦でできている

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朝、回廊にはまだ誰もいない

開門してすぐの瑞龍寺には、人影のない時間があります。総門をくぐると、芝生の緑の向こうに山門、その奥に仏殿。回廊の柱が等間隔に朝の影を落とし、聞こえるのは玉砂利を踏む自分の足音だけ。高岡のまちなかにいながら、ここだけ音の質が違います。

まず目を引くのは仏殿の屋根です。瓦らしい色をしていません。鈍い銀色で、曇りの日は空に溶け、晴れた日は光をやわらかく返す。この屋根は鉛の瓦で葺かれています。国内の寺院建築でもきわめて珍しい、この寺の顔というべき一点です。

殿様ひとりのための伽藍

瑞龍寺は、加賀前田家二代・前田利長の菩提を弔うために建立された曹洞宗の寺院です。高岡のまちを開いた殿様を弔うため、前田家は長い歳月と莫大な費用をこの伽藍に注ぎました。山門・仏殿・法堂の三棟は国宝に指定されています。

なぜ屋根に鉛を使ったのか。いくさの際に溶かして鉄砲玉に替えるためだったという説も語られますが、確かなことは分かっていません。はっきりしているのは、屋根一面を鉛で葺くという尋常でない選択を、前田家がためらわなかったことです。

左右対称は、歩くと立体になる

伽藍の読み方は難しくありません。総門から入り、山門をくぐる瞬間、視界が太い柱と梁で四角く絞られます。それを抜けた先で芝生がいっぱいに開け、正面に仏殿。ここで一度立ち止まると、山門・仏殿・法堂が一本の軸の上に一直線に並んでいるのが分かります。この軸線と、それを囲む左右対称の回廊。骨格はこの二つだけです。

次に回廊へ上がって、一周してみます。歩きはじめると等間隔の柱が横に流れ、そのすき間で仏殿が現れては隠れます。角を曲がるたびに、さっきまで正面にあった軸線を横から、やがて背後から見ることになる。法堂の前まで来て振り返ると、歩いてきた左右対称の全体が、ようやく一枚の絵として収まります。写真では平板に見える配置が、歩くと立体になるのです。

回廊は雨や雪の日でも濡れずに歩けるつくりで、天気の悪い日ほど、鉛の屋根は空と同じ色に沈んでいきます。晴れの伽藍と雨の伽藍は、ほとんど別の建築です。

参拝の人が増える昼より、影の長い朝。鉛の屋根が鈍く光り出す時間に、静けさごと味わって歩く寺です。