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宇奈月温泉、湯は峡谷の上流からやってくる

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温泉街は、なぜ峡谷の入口にあるのか

なぜ黒部峡谷の入口に、これほどの温泉街があるのでしょうか。山あいの湯のまちは全国にありますが、宇奈月の成り立ちは少し変わっています。このまちに、もともと湯は湧いていません。湯は峡谷の上流にある源泉から、谷に沿って引かれてきます。まちの手前に湯があったのではなく、湯のほうがまちまで運ばれてきた温泉地なのです。

電源開発が湯のまちをつくった

宇奈月が開けたのは大正期。黒部川の電源開発が峡谷の奥へと進むのに合わせ、その玄関口として拓かれたまちです。人を寄せつけなかった谷に軌道が敷かれ、資材と人が行き交うようになり、上流の源泉から湯を引いて温泉街が生まれました。山へ向かう鉄道と湯のまちがひとつの時代の中で一緒に育った来歴は、温泉街のすぐ先から峡谷へ分け入っていくトロッコ電車の姿に、今もそのまま見てとれます。

引かれてくる湯は無色透明で、湯船の底まで澄んで見えるほど。すくうと手のひらに吸いつくようになめらかで、肌ざわりのやわらかい湯です。美肌の湯と評判で、峡谷を歩いて冷えた体には、夕方の一浴がいちばん効く順序でしょう。

日帰り客が帰ったあとのまち

宇奈月の一日には、はっきりした潮目があります。峡谷からの最終列車が着いて日帰りの人波が引くと、まちには温泉地本来の静けさが戻ります。夜は黒部川の川音が近くなり、湯上がりの体に山の冷気が心地よい。朝は峡谷から下りてくる冷たい空気の中を、湯けむりの立つ駅前まで散歩できます。この時間帯の宇奈月は、昼間の乗り換え地点とは別のまちです。

トロッコは片道の乗り物ではなく、湯のまちへ帰ってくる乗り物だと考えると、行程の組み方が変わります。トロッコを降りた日のうちに帰らない、という選択が、このまちの正しい使い方です。