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射水・内川、「日本のベニス」は橋を渡り直して味わう

両岸に漁船が係留された内川。観光用の水路ではなく、今も現役の漁港水路 写真: くろふね(CC BY 4.0)
両岸に漁船が係留された内川。観光用の水路ではなく、今も現役の漁港水路 写真: くろふね(CC BY 4.0)

夕暮れの内川を、橋の上から見下ろします。両岸には漁船がずらりと舳先を並べ、水面には格子の家並みと空の残り火が映っている。船が一艘戻ってくると、映り込んだ町並みがゆっくり揺れて、また静かに戻ります。射水市新湊、内川。この川辺の時間を味わうのに、予定表はいりません。

漁船が家の前に停まる町

内川がほかの水辺の観光地と決定的に違うのは、ここが今も現役の漁港水路だということです。両岸の係留は絵になる演出ではなく、漁師の日常そのもの。家の前に自家用車ではなく漁船が停まっている、と言えばこの町の成り立ちが伝わるでしょうか。川は淡水と海水が交わる汽水で、橋の上まで海の匂いが届きます。この暮らしの風景が「日本のベニス」といわれるのですが、水の都という呼び名より先に、まず働く川であること。それがこの場所の美しさの正体です。

橋を渡り直すたび、町の顔が変わる

歩行者専用の屋根付き橋・東橋。手前の岸には漁船が並ぶ 写真: 漱石の猫(CC BY 4.0)
歩行者専用の屋根付き橋・東橋。手前の岸には漁船が並ぶ 写真: 漱石の猫(CC BY 4.0)

内川の歩き方に、決まった順路はありません。いくつもの橋が架かっているので、片岸を歩いては橋を渡り、対岸を少し戻って、また次の橋で渡り直す——このジグザグが、いちばん贅沢な歩き方です。橋にはそれぞれ個性があります。東橋は歩行者専用の屋根付きの橋で、木の屋根の下から眺める川は、額に入れた絵のように見えます。神楽橋は欄干にステンドグラスがはめ込まれていて、渡る途中で必ず足が止まる橋です。

渡り直すたびに、さっきまで歩いていた岸が対岸になり、順光だった家並みが影絵に変わります。同じ川なのに、立つ岸によって町の顔が変わる。行って戻るだけの散歩がいつまでも終わらないのは、そのせいです。

北前船の記憶と、今日の水面

この町並みの奥行きは、内川がかつて北前船の中継地として栄えた港町であることに由来します。曳山まつりの風情を残す家並みが川沿いに続き、祭りの日でなくても、通りには湊町の気配が漂います。川を行く内川遊覧の船もあり、晴れた日には海越しに立山連峰が姿を見せることもあります。

それでも、内川のいちばんの見どころは、名のある景色ではなく時間そのものです。日が落ちて家々に灯りがともり、係留された漁船が影になるころ、最初の橋へもう一度戻ってみてください。朝には漁へ出ていく船が、いまは静かに休んでいる。渡り直してきたどの橋の眺めよりも、その水面が長く記憶に残るはずです。