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富山の水はなぜうまいのか、蛇口の先に立山がある

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答えは山の高さと平野の近さ

富山の水は、なぜうまいのでしょうか。食堂で出された一杯の水に旅行者が驚くところから、この土地の食の話は始まります。答えを先に言えば、三千メートル級の山々と平野との距離が、極端に近いからです。

立山連峰に降り積もった雪は、春から夏にかけてゆっくり解け、地中に染み込んで伏流水となり、平野へ下っていきます。山が高く、里までの道のりが短いこの地形では、水は冷たく澄んだまま暮らしのそばへ届きます。県内の水の多くがこの水系に支えられていて、蛇口の先に立山がある、という言い方が誇張になりません。

宿の手洗い鉢。蛇口をひねれば、この水も立山の雪解けにつながっている
宿の手洗い鉢。蛇口をひねれば、この水も立山の雪解けにつながっている

汲みに通う人がいる水

この水の質は、外からも認められてきました。黒部川扇状地湧水群は名水百選に選ばれており、県内にはほかにも湧き水の場所が点在します。黒部の生地のように、湧き水が共同の水場としてまちなかに残る地区もあり、容器を提げて水を汲みに通う地元の人の姿は、富山ではめずらしい光景ではありません。買う水ではなく、汲みに行く水がある——それだけで、この土地の水の立ち位置がわかります。

米も酒も魚も、同じ水の話

そして、この水はコップ一杯では終わりません。良い水が平野の米を育て、その米と同じ水系の仕込み水が地酒を醸します。山の水は川を下って富山湾へ注ぎ、湾の魚たちの世界へつながっていきます。米がうまい、酒がうまい、魚がうまい——旅先では別々の感想に見えますが、地図の上でたどれば、根は一本の水系です。寒ブリも白えびも鱒寿司も地酒も、富山の食の話は、どれもこの一本の続きとして読めます。

だから富山に着いた日の最初の一杯は、茶でも酒でもなく水がいいのです。荷を解いたら、まず台所でコップに一杯。冷たさの奥にかすかな甘みを感じたら、旅の舌はもう準備ができています。この土地の食のすべては、そこから始まります。