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称名滝の350mはなぜ春に二本になるのか

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春、滝の隣にもう一本の滝が現れる

春の称名滝を見上げた人は、たいてい同じ疑問を持ち帰ります。滝が二本ある——あれは何なのか。落差350mの称名滝のすぐ隣に、さらに細く長い水の帯がもう一本落ちています。ハンノキ滝と呼ばれるこの滝は、雪解け水が豊富な時期にだけ現れるもの。地図に名前が載っていても、夏の盛りに訪ねると影も形もないことがあります。

答えは立山の雪にある

種明かしは水源の違いです。称名滝は一年を通して水を落とし続けますが、ハンノキ滝を養うのは主に雪解けの水で、山の雪が急速にとける季節にだけ流れが立ち上がります。立山連峰一帯は世界有数の豪雪地。春になると、山にたくわえられた冬の雪がいっせいに水に変わります。あふれた分が、二本目の滝という形で断崖に現れるわけです。

称名滝そのものは、350mの落差を四段に分けて落ちます。V字に切れ込んだ谷の正面、垂直の岩壁に白い水の帯が縦に立つ姿は、遊歩道の遠くからでも見誤りようがありません。この落差は日本一とされ、雪解けの最盛期には水量が増して、谷全体が水の音で満ちます。滝に近づくと水煙が風に乗って顔まで届き、轟音は耳より先に胸に響く。光の角度がよければ、風に流れる水煙に虹がかかります。

名前は水の音から来た

称名という名は、水音が称名念仏を唱える声のように聞こえたことに由来すると伝えられています。古くから立山信仰と結びついてきた滝で、この轟音を仏の声と聞いた時代の感覚は、実際に滝の前に立つと少しわかる気がします。

二本目の滝は、春の水量が断崖に描く期間限定の線です。雪解けが峠を越えれば細くなり、消え、また次の春に現れる。滝を見れば、山にどれだけ雪が残っているかが読めます。ここでは、水量が季節を教えてくれるのです。