同じ「古いまちなみ」ではない
高岡のまち歩きで、金屋町と山町筋を同じ「古いまちなみ」と括ると半分損をします。片方は鋳物師の職人町、もう片方は商人の町。生まれが違う二つの通りは、見るべきものも別です。先に結論を言えば、金屋町では格子と足元を、山町筋では壁を見る。これだけで歩き方が変わります。
金屋町は、高岡を開いた前田利長が鋳物師を招いて住まわせたことに始まる職人町です。千本格子の家並みが続き、石畳には銅片が敷き込まれ、軒先や看板のそこかしこに金属の意匠が潜んでいます。歩いていると、格子の奥から金属を磨く音が漏れてくることもある。高岡銅器の源流は、この一角にあります。
一方の山町筋は、商いで栄えた旦那衆の町。明治の大火のあとに防火を意識して建てられた土蔵造りの商家が並び、黒漆喰の重厚な壁にレンガや洋風の意匠が混じります。守るべき商品と帳場があった町は、壁の厚みからして違うのです。
歩き分けの要点
- 金屋町で見るもの——千本格子の連なり、銅片の光る石畳、軒先の鋳物の意匠
- 山町筋で見るもの——黒漆喰の土蔵造り、分厚い防火壁、洋風の窓や柱の装飾
- 回り方——二つの通りは歩いて行き来できる距離。片方だけで引き返さない
- 時間帯——朝夕が静かで、格子と漆喰の陰影がいちばん濃く見える
祭りの日、二つの町が出会う
山町筋を舞台に、毎年5月1日には高岡御車山祭が行われます。金工や漆工の技で飾られた山車が土蔵造りの通りを巡る祭りで、商人町が蓄えた富と職人町が磨いた技が、一台の山車の上で出会います。二つの通りを歩き分けたあとなら、この祭りの意味も立体的に見えてくるはずです。
職人の町は格子と石畳に、商人の町は漆喰の壁に、それぞれの暮らしを刻んできました。まちの性格は、通りの床と壁に出ます。