答えは湾の底の地形にある
白えびは、なぜ富山湾でしか獲れないのでしょうか。正確に言えば、白えび自体はほかの海にもすんでいます。ただ、漁になるほどまとまって獲れるのは世界でも富山湾だけといわれます。その鍵を握るのが、湾の底の地形です。
富山湾の海底には、岸の近くから深みへ切れ込む深い谷が何本も走っています。白えびはこの谷筋の深みに群れをつくり、漁はその谷の上で行われます。つまり、岸からわずかな距離で深海の漁場に手が届くのです。浅い棚が延々と続く海では、こうはいきません。深海の生き物がこれほど「近い」ことこそ、この湾の特異さであり、白えび漁が富山湾で成り立つ理由です。
淡い桜色の、半透明の体
水揚げされた白えびは、淡いピンクがかった半透明で、光を受けるとほのかに輝きます。「富山湾の宝石」の異名は、この見た目から来ています。体は小さく、一尾から取れる身はごくわずかです。
だから刺身は、手間の塊になります。小さな殻を一尾ずつむき、透きとおった身を集めて、ようやくひと口分。皿の上では身がとろりと折り重なり、箸で持ち上げると光が透けます。舌に載せたときの甘みと粘りは、その手間の向こう側にあるものです。かき揚げにすれば香ばしさが立ち、昆布じめにすれば旨みが深まり、すし種にすれば軍艦や丼で主役を張ります。どの食べ方をしても、真ん中にいるのはあの小さな身です。
小ささが贅沢の単位になる
大きな魚の豪快さとは反対の場所に、白えびの贅沢はあります。深い谷から揚がった小さな体を、人の手が一尾ずつむいて、ようやくひと皿にする——皿の白えびが何十尾分の手仕事なのかを思うと、ひと口の重みが変わります。口に運ぶたび、そこに掛かった手間ごと味わうことになります。富山湾では、小ささが贅沢の単位になるのです。