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諏訪町本通りは朝に歩く——日本の道百選の石畳

日本の道百選に選ばれた諏訪町本通りの石畳
日本の道百選に選ばれた諏訪町本通りの石畳

誰もいない朝の石畳から

朝の早い時間、諏訪町本通りに人影はほとんどありません。夜のあいだの露を含んだ石畳がしっとりと光り、ゆるやかな坂の先へ、格子の家並みがまっすぐ続いています。視界を横切る電線がなく、屋根の上に空が広く抜けている——この通りに立ったとき、まず気づくのはそのことです。写真で知っていたはずの道が、思っていたより静かで、思っていたより空が大きい。格子の家並みの軒先が、坂の傾きのままきれいな段を作って連なっています。

諏訪町本通りは「日本の道百選」に選ばれた道です。ただ、選定の看板を確かめるために来る道ではありません。この道の値打ちは、いつ、どんな速さで歩くかによって変わります。

坂を一歩上がるごとに、景色が組み変わる

通りはゆるい坂に沿って続きます。数歩上がるごとに屋根の重なり方が変わり、空の広さが変わり、振り返れば、下ってきた石畳と家並みがひとつの眺めにまとまって見えます。平らな道では起こらないことが、坂の道では歩くたびに起こります。立ち止まって見上げれば、二階の格子や軒下の意匠が一軒ずつ違うことにも気づきます。速く歩けば、それだけ多くを見落とす道でもあります。

日中は観光の人が行き交い、おわら風の盆の夜には、ぼんぼりの明かりに照らされて祭りを象徴する舞台になります。それも確かにこの道の顔です。けれど朝の顔は別のものです。雨戸の開く音、店先を掃く箒の音。暮らしの道としての一日が、観光の一日より先に始まっています。露の乾かないうちの石畳は色が深く、昼とは別の道のように見えます。

どこかへ行く途中に通り抜ける道ではなく、この道を歩くために八尾へ来る。朝の諏訪町本通りは、道そのものが目的地になれることを教えてくれます。

宿の欄干から見下ろす通り。二階の高さから眺める町並みも味がある
宿の欄干から見下ろす通り。二階の高さから眺める町並みも味がある