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富山おでん、とろろ昆布が出汁を吸って消えるまで

大根や卵ののった椀に、とろろ昆布がひとつかみ 写真: 極地狐(CC BY-SA 2.0)
大根や卵ののった椀に、とろろ昆布がひとつかみ 写真: 極地狐(CC BY-SA 2.0)

窓の外は雪もよい。湯気の立つ鍋から取り分けた一皿が、目の前に置かれます。大根、卵、こんにゃく——ここまでは、どこの町でも見る顔ぶれです。ただし富山では、その上に白いふわふわの山がのっています。とろろ昆布です。

のせるのは、とろろ昆布

富山には、おでんにとろろ昆布をのせて食べる習慣があります。特別な演出ではありません。富山の台所で、とろろ昆布はおにぎりに巻かれ、汁物に落とされ、うどんにのせられる日常の食材です。おでんの椀は、その延長線上にあるだけのこと。棚に常備された袋から、ひとつかみ。この土地の人の手つきに、ためらいはありません。

白とろろが、出汁を吸ってほどける

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とろろ昆布には黒とろろと白とろろがあり、削る部位と厚みで分かれます。おでんの上でよく映えるのは、白とろろです。のせた瞬間から、見どころが始まります。ふわりと盛られた白い糸が、出汁を吸って半透明になり、ふくらみ、くたりとほどけて、汁と一体になっていく。全部ほどける前に具へからめて食べるか、汁に溶け切ったところを飲むか。引き上げる頃合いを自分の箸で決められるのが、この食べ方の楽しみです。大根にまとわせれば出汁が二重になり、卵にのせれば黄身に磯の香りが差します。

具にも、板がない

椀の中をよく見ると、富山らしさは上だけではありません。具に入るかまぼこは、渦巻き模様の赤巻。板の付いていない、富山の巻きかまぼこです。とろろ昆布が汁に溶け、赤巻が出汁を吸い、最後は椀に口をつけて汁まで飲み干す。そこまでで、一杯が完成します。

食べ終わるころ、とろろ昆布は姿を消しています。けれど汁をひと口飲めば、ちゃんといるのがわかります。消えたのではなく、汁になった——富山のおでんのいちばんの具は、目に見えなくなってからが本番なのです。