結論、単品で挑まない
初めての富山ブラックで守ることは一つだけ。麺と一緒に、白ご飯を頼むことです。これは好みの問題ではなく、この一杯の設計にかかわる話です。富山ブラックは、ご飯と食べて初めて完成するように濃く作られています。
どんぶりが運ばれてくると、まず見た目に驚きます。スープは墨を思わせるほど黒く、底が見えません。濃い口の醤油を強く効かせた色で、表面には粗挽きの黒胡椒が浮かび、刻んだねぎとチャーシューがのります。ひと口すすると、しょっぱさが正面から来ます。ここでご飯の出番です。スープをまとった麺のあとに白飯をひと口挟むと、塩気がちょうどよい濃さに変わり、箸が止まらなくなります。
濃さには理由がある
この濃さは、奇をてらったものではありません。戦後の復興期、汗を流して働く人たちの塩分補給のために生まれたと伝えられています。おかずとして成立するラーメン、というのが出発点で、だからご飯と合わせる食べ方は裏技ではなく、本来の姿に近いのです。見た目のインパクトが先に広まりましたが、順序は逆で、まず働く人の昼飯があり、その必要が色になりました。
初回の心得をまとめておきます。
- 白ご飯を最初から一緒に頼む
- スープは飲み干す前提にしない——麺と具を主役にする
- 店ごとに黒さも塩気も幅がある——一杯で全体を判断しない
驚くために食べる一杯
正直に言えば、富山ブラックは万人向けの味ではありません。しかし旅先の食事の何割かは、驚きのためにあります。黒い水面を前に一瞬ひるみ、ひと口で目が覚め、ご飯を挟んで設計が腑に落ちます。食べ終えて店を出たあとも、胡椒の辛さがしばらく舌に残るはずです。それも含めて、あの驚きごと味わうのが正しい食べ方です。富山ブラックは、驚くために食べる一杯なのです。